交通事故から時間が経っても心のケアが必要
多くの場合、交通事故の直後にはたくさんの人が心配してくれますが、当然のこととして時間の経過ととともに関心事は他のものに移っていきます。
見た目には回復しているように見えたとしても、すべてが元通りになるのにはかなりの時間がかかり、表面上は元気にしていても心に傷を負っていることも珍しくありません。
さらに身近な家族が交通事故にあった場合にも、それなりのショックを受けており、やはり回復に時間がかかるでしょう。
ここでは、交通事故にあってしまったご本人、そして家族が交通事故にあってしまった人にも、継続した心のケアが必要であることについて取り上げていきたいと思います。
言ってはいけないこと、やってはいけないこと
自分の体験したことで申し訳ないのですが、話を聞いてもらえたことはうれしく、気遣ってもらえたことには本当に感謝しました。
一方人によっては、自分の時はこうだったという話を延々と話されるので、正直困りました。
「自分はもっと大変な事故にあったけれど、根気よくリハビリに取り組んで回復した。あなたの方が若いのだから、すぐに治るはず」
という話を30分近くされたことがあり、「事故の状況もケガの状態も全く違うのに、どうしてそんなことが言えるんだろう」と思いました。
10年以上の交流のある、気心の知れた友人から言われた言葉でしたが、この出来事があってから近づきにくくなってしまい、思わずなんとなく距離が出来てしまったように思います。
人によって感じ方や考え方は異なっていますが、ほとんどの人は自分が特に弱っている時には支えや助けが必要です。
さらに体が回復していくスピードと、心の傷がいえていくスピードは同じではないので、目で見てわかるものでもありません。
「事故から〇月過ぎたらこうしましょう」
という決まりはありませんが、被害者に合わせる、寄り添う、よく話を聞く姿勢が必要です。
自分の体験や経験を話してはいけない、というわけではありませんが
「あなたはこうするべき」
「もっと〇〇した方が良い」
と決めつけるようなことを言ったり、相手の傷をえぐるようなことは避けたいものです。
今は事故で受けたダメージからの心身の回復に必要な時間であり、「癒すのに時がある」のです。
被害者の家族も傷ついている
交通事故の被害者ご本人だけでなく、被害者の家族も傷ついています。
表向きは元気そうに振る舞っていても、それなりのショックを受けていることも多く、ご家族に対しても心身のケアが必要になると思います。
少し前ですが、お子様が交通事故でけがをされた親御さん数名と、お話をする機会がありました。
「あの時自分も一緒について行っていれば、事故を防げたかもしれない」
と事故に対しての責任を感じている人もいらっしゃいましたし、
「どうしてうちの子がこんな目にあわなくてはいけないのだろう」
と思う方もいらっしゃたりして、感じ方や表現の仕方は色々でした。
しかし、どの親御さんも大切な我が子のことを案じていて、傷つき悲しんでおられました。
心のケアには時間が必要
交通事故の関係者は、心身ともに大きく傷つくことが多く、回復には何年もかかることがあります。
以前は楽しんでいた遊びや趣味を楽しむことが出来なくなったり、ふさぎ込んでしまったり、涙もろくなったりすることがあるかもしれません。
何か助けになりたいと思って話しかけても、そっけなかったり、イライラしているように見えることもあるでしょう。
それらの反応が事故のショックからくるものの場合には、回復には時間がしばらくかかることを認識したうえで、根気強く接していくことが必要になります。
はた目から見れば
「いつまで落ち込んでいるんだろう?」
「気持ちを切り替えたほうが良いのに」
と思われてしまいがちですが、落ち込みっぱなしというわけではなく、回復の途中ということも多いのです。
私たちには自分の生活もあるわけですから、相手の必要や要求すべてに答えることは不可能です。
「どこまでするか」「どこまでできるか」を決めておいて、自分に出来ることをするのは決して悪いことではありません。
しかし、できる範囲で話を聞いたりするなら、大切な心のケアをすることになり、回復を助けることになるでしょう。