バイク事故と慰謝料相場(3)〜入通院慰謝料の計算方法と相場〜

バイク事故と慰謝料相場シリーズ第3弾のこの記事では、自賠責保険基準での具体的な入通院慰謝料の算出方法について解説していきます。

 

自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算方法

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自遺跡保険基準では、入通院慰謝料は1日当たり日額4,300円と決められています。
具体的な計算式について説明します。

 

まず、「交通事故後の初診から治療終了までの期間」または、「実際の入通院日数の2倍」に日額4,300円を乗じて金額を算出します。

そして算出された金額のうち、少ない方が入通院慰謝料となります。
具体的に計算式を見てみましょう。

 

  •  ・治療期間×4,300円
  • ・入通院日数×2×4,300円

 

なお、民法改正に伴い、交通事故発生日が2020年3月31日以前の場合には入通院慰謝料は日額4,200円でしたので、計算する場合は交通事故がいつ発生したのかという点に注意してください。

 

では上記計算式を具体的なケースにあてはめて、入通院慰謝料を計算してみましょう。


バイクの交通事故に遭ってむちうちになり、初診から治療終了まで3か月、実際には病院には1か月につき10日通院していたとします。

 

交通事故後の最初の診断から治療終了までの期間は約90日です。

日額4,300円×90日=387,000円

 

実際に病院に通院した日数は10日×3か月=30日です。

日額4,300円×30日×2=258,000円

 

この場合実通院日数を採用して計算したほうが金額は小さいので、実通院日数で算出された数字が入通院慰謝料の金額として採用されます。

 

したがって、このケースでは入通院慰謝料は258,000円だと算出されることになります。

 

ここで、上記のような計算式をみて、2日に1回以上通院すれば慰謝料額が増額すると誤解される方がいます。

 

しかし、2日に1回通院した場合、「治療期間×4300円」と「入通院日数×2×4300円」のいずれの式で計算しても金額は同じになります。


どういうことかというと,治療期間6か月(180日)で,2日に1回(90日)で通院したケースで説明しましょう。

 

「日額4,300円×治療期間180日=774,000円」と「日額4,300×実治療日数90日×2=774,000円」は同じ値になります。

 

これを見ると分かるとおり、2回に1回のペースで通院した場合では治療期間、実治療日数いずれの計算式で計算しても、慰謝料の金額は同じになります。

 

よって,2日に1回以上通院したとしても,上記のケースでは180日の治療期間が上限となりますので慰謝料が増額しないということになります。

 

任意保険基準の入通院慰謝料の計算方法

では,任意保険基準の入通慰謝料はどのように計算するのでしょうか。

この基準は保険会社が各社設定していますので一概に説明することはできません。
ここでは、保険会社が被害者に提示するおおよその相場をご紹介します。

任意保険基準は加入している保険会社によって異なり、金額等も非公開ですが、平成11年7月以前は統一基準があったため、その金額を参考にしています。

 

任意保険基準の入通院慰謝料表(単位:万円)

入院
通院
0月 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月
0か月 0 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 128.5
1か月 12.6 37.8 63 85.7 104.6 121 134.8
2か月 25.2 50.4 73.1 94.5 112.2 127.3 141.1
3か月 37.8 60.5 81.9 102.1 118.5 133.6 146.1
4か月 47.9 69.3 89.5 108.4 124.8 138.6 151.1
5か月 56.7 76.9 95.8 114.7 129.8 143.6 154.9
6か月 64.3 83.2 102.1 119.7 134.8 147.4 157.4

 

上記の表について解説していきます。

入院しかしていない場合には,「入院」という欄の最上段の「行」のみを見て,それに対応する数字が慰謝料金額となります。
このケースでは通院はしていませんので、それ以上下の「行」を見る必要はありません。

 

逆に通院のみの場合には「通院」の欄のうち一番左の列の月数が通院期間になりますので、それに対応する部分の金額が慰謝料金額となります。

このケースでは入院はしていませんので、この列以外の左側の「列」をみる必要はありません。

 

次に、入院と通院の両方があった場合について説明します。
入院した月数と通院した月数とが交わる欄に記載された金額が、慰謝料の基準となります。

 

それでは具体的に考えてみましょう。
通院期間が3か月で実通院日数が40回の場合を考えてみましょう。
上記の表より入通院慰謝料は378,000円です。

 

弁護士基準(裁判基準)の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

それでは,弁護士基準とはどのようなものなのでしょうか。
この基準(裁判基準)には2つの入通院慰謝料の算定基準があります。

 

これらは、日弁連交通事故相談センター東京支部「損害賠償額算定基準」2019年版(通称「赤い本」と呼ばれています)に記載されています。
なぜ2つの基準があるのかというと、交通事故による受傷状態は多様なので、きめ細かく対応するためです。

 

むち打ち症や軽い打撲や軽い挫創を含む軽傷で、他覚症状がない場合には入通院慰謝料表①を使用します。

それ以外の場合には、入通院慰謝料表②を使用するとされています。

 

入通院慰謝料表①(単位:万円)

入院
通院
0月 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月
0か月 0 35 66 92 116 135 152
1か月 19 52 83 106 128 145 160
2か月 36 69 97 118 138 153 166
3か月 53 83 109 128 146 159 172
4か月 67 95 119 136 152 165 176
5か月 79 105 127 142 158 169 180
6か月 89 113 133 148 162 173 182

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

 

入通院慰謝料②(単位:万円) 

入院
通院
0月 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月
0か月 0 53 101 145 184 217 244
1か月 28 77 122 162 199 228 252
2か月 52 98 139 177 210 236 260
3か月 73 115 154 188 218 244 267
4か月 90 130 165 196 226 251 273
5か月 105 141 173 204 233 257 278
6か月 116 149 181 211 239 262 282

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

 

具体的に表を見ながら入通院慰謝料を算出してみましょう。
むち打ち症になり,通院のみ3か月を要したケースについて考えてみましょう。

このケースはむち打ち症なので①の表を使用します。
①の表より入院0、通院3か月の場合,入通院慰謝料は530,000円です。

 

では,事故の結果,骨折をして通院のみ3か月を要したケースを考えてみましょう。
この事案は骨折という重症事案ですので、②の表を使用して慰謝料を割り出します。
入院0、通院3か月の場合,入通院慰謝料は730,000円です。

 

まとめ

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場について解説をいたしました。

 

こちらの交通事故に精通している弁護士事務所の記事によると、バイク事故の致死率は、自動車事故の致死率の約4.5倍にもなるようです。

 

バイク走行時はヘルメットなどを適切に装着し、安全運転を徹底したいですね。

 

この記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。

 

本日もお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

バイク事故と慰謝料相場(2)〜慰謝料の3つの基準〜

前回から「バイク事故と慰謝料相場」について解説をしています。

今回は交通事故慰謝料の3つの基準を見ていきたいと思います。

 

交通事故慰謝料の3つの基準

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まず、バイクの交通事故の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料については、次の3つの算定基準が存在しています。

どの基準を採用するかで算出される慰謝料金額の相場は変わってきますので、この基準の相場を理解することは重要です。

 

  • ・自賠責保険基準
  • ・任意保険基準
  • ・弁護士基準(裁判基準)

 

(1)自賠責保険基準について

自賠責保険基準とは、自賠責保険での支払い基準のことをさします。

 

自賠責保険とは、自動車損害賠償責任保険の略称です。

自賠責保険は、被害者を救済することを目的に、自動車を運転する人に加入が義務付けられているものです。
交通事故による負傷や後遺障害などに対する賠償金の相場が決定されています。

 

自賠責保険は強制保険と呼ばれているもので、いわゆる原付(原動機付自転車)を含むあらゆる自動車を使用する人は加入しなければなりません。

 

自賠責保険には加入義務がありますので、この義務に反して自賠責保険に加入せずに自動車を運行した場合には、違法点数6点となり直ちに免許停止処分や1年以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい行政処分及び刑事処罰の対象となってしまいます。

 

また、自賠責保険の証明書を携帯せずに自動車を運行した場合であっても、30万円以下の罰金という刑事罰の対象とされていますので注意が必要です。

 

この制度の主な目的は、被害者に対する最低限度の補償にあります。
自賠責保険は強制加入の「共済」という性質が強い保険になります。
したがって、被害者に補償される範囲は対人賠償に限られ、対物補償は含まれていません。

 

さらに補償には上限額が決められています。
自賠責保険の被害者に補償される上限額は、120万円と決まっています。
この上限は、慰謝料のみならず治療費や休業損害・逸失利益などその他のすべての損害賠償額が120万円を超える範囲については補償してくれません。

 

以上から、自賠責保険基準は被害者の救済のために必要最低限度の補償金額が設定されており、十分な額であると言うことは難しいでしょう。

 

(2)任意保険基準とは

任意保険基準とは、保険会社が独自に定めている慰謝料の算定基準になります。
そのため、任意保険会社によって定められている基準は、会社ごとに多少異なるところがあります。

 

強制的に加入が義務付けられている自賠責保険と比較して、任意保険は「任意」と呼ばれているとおり、自転車の利用者には加入する義務はありません。

加入者がどこの保険会社と契約するか、どのような損害を補償してもらうのかも自由に選択して契約することができます。

 

任意保険により具体的に補償することができる損害の範囲は以下にあげるものになります。

 

(1)対人賠償保険
対人賠償保険とは、交通事故の相手方を負傷または死亡させてしまった場合に、損害を補填してもらうために加入する保険です。
自賠責保険の補償上限を超える損害を補うために任意保険が利用されます。

 

(2)対物賠償保険
対物賠償保険とは、交通事故によって相手方の自動車や第三者の物品を破損・故障させてしまった場合に、損害を補填してもらうために加入する保険です。

 

(3)人身傷害保険
人身傷害保険とは、加入者自身や搭乗者を対象に、契約車以外の搭乗中や歩行中の事故を含めた交通事故による受傷を補償するために加入しておく保険です。

 

(4)搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険とは、交通事故による搭乗者への受傷を補償するために契約者が加入しておく保険です。

 

(5)無保険車傷害保険
無保険車傷害保険とは、加害者に損害賠償能力がない場合に、損害を補償してもらうために加入する保険です。例えば,交通事故の相手方が無保険車だったようなケースです。

 

(6)車両保険
車両保険とは、交通事故により契約車が破損・故障した場合に、損害を補償してもらうために加入する保険です。

 

対人賠償保険や対物賠償保険は、制限なしで補償される任意保険が多い印象です。
自賠責保険の補償限度額が120万円ですので自賠責保険で補償できない損害を補うために加入する方が多いでしょう。

 

対物賠償については自賠責保険では補償されないため任意保険に加入して損害を補償することになります。

 

以上みてきた任意保険基準ですが、任意保険会社が提示する任意保険基準はあくまで社内基準ですので外部の人間が確認することができません。
対人賠償保険には限度額がありませんが、どの程度の金額が補償されるのは公にはされていないという実態があります。

 

バイク事故と慰謝料相場シリーズで提示するような任意保険基準は過去の保険会社のデータなどから補償額を算出した推定値になります。

 

弁護士基準(裁判基準)とはなにか

弁護士基準は、裁判基準とも呼ばれています。
弁護士基準とは、過去の交通事故判例などを参考に裁判所が認めた損害賠償額を基準に算出した基準になります。

 

上記3つの慰謝料算定基準の中でもっとも高い基準になります。

 

弁護士基準は、日弁連交通事故相談センターが出版している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という書籍(通称:赤い本)に掲載されています。

また「交通事故損害算定基準」という書籍(通称:青い本)にも弁護士基準は掲載されています。
 

弁護士基準は、裁判所が特別に認めた特殊な基準というような印象を受ける方が多いかもしれません。
しかし、実際は裁判所が紛争のあった交通事故事件について、当事者双方からなされた主張や提出された証拠に基づいて、法的に正当な金額として認定した損害賠償金額になります。
したがって、もっとも厳格に被害者の損害を評価して認められた賠償金額であると言えます。

 

過去の裁判例を参考にしていますので、当事者の間で十分主張立証が尽くされたうえで裁判官が心証を抱いて判断されて算出されたものになります。
保険会社がいわば勝手に設定している人保険基準とは違って、客観的かつ公正な基準であると言ことができるでしょう。

 

なお、権威ある裁判所が判断した基準であるのであれば、全ての事件を弁護士基準で慰謝料額を算定すれでよいのではないかと思われる方もいるかもしれません。
たしかに弁護士基準は実際の裁判でも参考にされ、弁護士や裁判官も参照しながら訴訟手続を進めていく基準ですが、あくまで参考です。

 

それでは、相場が高い弁護士基準で損害賠償を請求するためにはどうすればよいのでしょうか。
裁判基準だからといって、必ずしも訴訟を提起する必要はありません。

 

弁護士に依頼した場合には、弁護士基準で算出された賠償額で和解交渉を行います。
したがって、任意での話し合いを弁護士に依頼すれば、弁護士基準またはその基準に近い基準で和解交渉を進めることができます。

 

双方譲歩した上で和解する場合には、弁護基準どおりの満額の賠償金が受けとるというのは難しいでしょうが、他の2種類の慰謝料基準と比べて、より高額な弁護士基準を参照して高い金額で示談できる場合がほとんどです。
この点の詳細については次回以降に解説をします。

 

まとめ

どの基準で示談交渉を進めるのかによって金額が変わってきますので、示談交渉に応じる際は慎重になさってください。

 

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

バイク事故と慰謝料相場(1)〜慰謝料の3つの種類〜

バイク事故によって負傷したり、亡くなってしまったりした場合には、被害者本人や遺族は慰謝料を請求することができるということをご存じの方は多いでしょう。
それでは、バイク事故の慰謝料の相場はどのように決まっているのでしょうか。

 

今回は4記事に分けて、慰謝料の種類と3つの算定基準及びその相場について詳細に解説していきます。

 

バイク事故の慰謝料は3種類

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まず、バイクで交通事故に遭った場合、被害者が加害者に請求することができる損害賠償金のうち「慰謝料」について解説していきましょう。
示談金とは慰謝料とイコールだと思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、そのような理解は不正確です。

 

示談金とは、被害者が加害者から受け取ることができる損害賠償金の全部を指します。
一方、慰謝料とは被害者が受け取ることができる損害賠償金の一部にしかすぎません。
では示談金の内訳とはどのようになっているのでしょうか。
ここで簡単に解説しておきます。

 

バイク事故によって被害者が支払わなければならなかった出費のことを、「積極損害」と言います。
積極損害には、具体的には入院費や通院費、病院までの交通費や破損した自動車の修理費等が含まれます。

 

バイク事故に遭ったことによって、本来であれば得られたはずなのに被害者が得られなくなった利益のことを「消極損害」と言います。

 

この消極損害には、具体的にバイク事故によって仕事を休まざるを得なくなり、得られなくなった収入のことをさす休業損害が含まれます。
また、後遺障害を負うと、労働能力が喪失または低下しますので、将来にわたって得られるはずが得られなくなった収入をさす逸失利益も消極損害に含まれます。

 

それではここでは、「慰謝料」について詳しく解説していきます。

まず、慰謝料とは、交通事故が原因で被害者が負った精神的または肉体的な苦痛に対して、それを慰謝するために支払われる損害賠償金のことをいいます。

 

バイクの交通事故で被害者に発生する慰謝料には、様々な種類があります。

バイクの交通事故で被害者が請求できる可能性が高い慰謝料は、次に説明する3種類です。

 

  • (1)入通院慰謝料
  • (2)後遺障害慰謝料
  • (3)死亡慰謝料

 

では、この3種類の慰謝料について詳しく解説していきます。
基本的にバイク事故の慰謝料については、自動車事故の慰謝料の考え方と共通しています。

  

(1)入通院慰謝料とは

(1)入通院慰謝料とは、事故によって怪我をして、入院または通院により治療することを余儀なくされたことで生じる精神的または肉体的な苦痛に対して、これを賠償するために支払われる慰謝料のことをいいます。

 

交通事故によって、入院または通院する必要が生じた場合には、基本的には入通院に対して損害が生じていると考えられます。
入通院の回数や時間の長さに応じて入通院慰謝料は計算されます。

 

入院・通院の時間が長いほど、または回数が多くなれば多くなるほど、入通院慰謝料の金額は大きくなります。

 

(2)後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とはどのようなものなのでしょうか。
後遺障害慰謝料とは,後遺障害を負ったことに対する精神的損害を慰謝するために支払われる金銭です。

 

後遺障害の意味とは,事故で怪我を負って治療を続けてきたが,これ以上改善する余地がないと診断された状態をさします。

 

後遺障害は,症状によっては非常に重篤で,被害者の今後の人生の生き方を決定的に変えてしますことも多いです。

 

したがって、将来のそのような被害者の負担についても考慮したうえで、慰謝料金額が決定されていると言えるでしょう。

 

そのような観点から後遺障害慰謝料は他の慰謝料と比べても金額が高くなることが一般的です。

 

(3)死亡慰謝料とは

死亡慰謝料とは、被害者がバイクの交通事故で死亡した場合に死亡させられたことに対する精神的または肉体的な苦痛に対する損害賠償金のことを言います。

 

実際には、被害者の遺族が加害者に対して請求することになります。

 

遺族は被害者自身の死亡慰謝料とは独立した遺族固有の慰謝料を請求することができます。
これは遺族自身にも被害者を亡くしたことに対する精神的苦痛が生じていることから当然だと言えます。

 

バイクの交通事故で慰謝料が請求できるのは、基本的に被害者が事故によって受傷して、人身事故として扱われた場合になります。
なぜなら、バイクや自動車その他の物品が壊れたり故障したりしただけの物損事故では、慰謝料は発生しません。

 

よって、短期間であっても病院に通院した期間がある場合であれば、慰謝料の請求ができるようになるでしょう。

 

 

まとめ

「バイク事故と慰謝料相場」シリーズの1つめは、慰謝料の種類について解説をしました。

次回は交通事故慰謝料の3つの基準にフォーカスした記事を公開予定です。

 

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

後遺障害の手続きの流れ・期間や必要書類について

前回は、後遺障害の概要などをご説明しました。

今回の記事では、後遺障害の手続きの進め方などを具体的に解説をしたいと思います。

 

申請手続きの流れ

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後遺障害申請は、決められた手順にしたがって手続きを進めなければなりません。
具体的には、以下の流れで後遺障害申請の手続きを進めていきます。

 

治療で症状固定の状態になった後手続きを開始する

負傷による後遺症が後遺障害と認められるためには、症状固定の状態になければなりません。
そのため、治療の結果、症状固定の状態になった後、後遺障害申請の手続きを開始することになります。

 

負傷による後遺障害が症状固定の状態にあるか否かの判断は、医師の診断によって行ないます。
後遺障害申請をする場合、医師の診断にしたがった上で手続きを開始することが大切です。

 

医師に後遺障害診断書を執筆してもらう

交通事故による負傷が症状固定の状態になった後、医師に後遺障害診断書を執筆してもらわなければなりません。
この後遺障害診断書は、後遺障害申請の手続きをする際に提出しなければならない重要な書類です。

 

等級認定の可否は、提出する後遺障害診断書の内容が大きく左右するため、後遺障害申請の手続きの中でも重要な局面になります。
医師による後遺障害診断書の執筆に関しては、この後詳しく見ていきます。

 

後遺障害申請の手続きを行なう

後遺障害診断書を医師に執筆してもらった後、後遺障害申請の手続きを行ないます。
後遺障害申請の手続きは、後遺障害診断書と必要書類を提出することから始まります。

 

申請手続きの手順は、事前認定の場合と被害者請求の場合とで異なります。
事前認定の方法で後遺障害申請を行なう場合、まず被害者が加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出します。

 

その後、加害者側の保険会社で必要書類を収集した上で、後遺障害申請の手続きを行なうのです。
一方、被害者請求の場合、被害者自身が後遺障害診断書と必要書類を提出して、後遺障害申請を行ないます。

 

審査・等級認定の結果通知

被害者または加害者側の保険会社から後遺障害申請がなされた後、自賠責保険会社側で審査を行ないます。
審査は損害保険料率算出機構という機関でなされて、その結果が自賠責保険会社に報告される形で進められるのです。

 

等級認定の結果の通知過程は、事前認定で手続した場合と被害者請求で手続した場合では、その方法が異なります。

 

事前認定で手続したときは、加害者側の保険会社に結果の通知がなされます。
そして、加害者側の保険会社が被害者に対してその結果を通知するのです。
これに対して、被害者請求で手続きしたときは、自賠責保険会社から被害者に直接結果の通知がなされます。

 

症状固定がカギ!医師による後遺障害診断書の執筆

医師による後遺障害診断書の執筆の時期や記載内容は、後遺障害の等級認定を受けるにあたって重要です。

 

後遺障害申請をする際、後遺障害診断書をいつ執筆してもらえばいいのでしょうか。
また、後遺障害診断書の記載内容についても気になるところです。
そこで、医師による後遺障害診断書の執筆の適切な時期と記載内容について解説していきましょう。

 

執筆時期は症状固定後

後遺障害診断書には、後遺症の具体的内容を記載しなければなりません。
後遺障害に該当する後遺症の具体的内容を把握できるのは、症状固定になったときです。
そのため、交通事故による負傷が症状固定になった後、医師に後遺障害診断書を執筆してもらうことになります。

 

後遺障害の具体的内容と今後の見通しの内容が重要

後遺障害申請後の審査では、「他覚症状および検査結果、精神・神経の障害」の部分が重点的に見られます。

 

また、「障害内容の増悪・緩解の見通し」の部分も同様です。
上記二つの記載事項が等級認定を受けられる内容となるように、医師に後遺障害診断書を執筆してもらいましょう。

 

他覚症状や検査結果の内容を具体的に執筆してもらうことが大切

「他覚症状および検査結果、精神・神経の障害」の部分には、その内容を具体的に執筆してもらうことが大切です。

 

たとえば、交通事故でむちうちになり後遺障害が生じたとしましょう。
この場合、むちうちで首や肩の部分に痛みが出たり、重さを感じたりするという形で具体的に執筆してもらうのです。

 

その際、痛みの強さや出る頻度も正確に執筆してもらいたいところです。
また、むちうちの痛みや重さで仕事や私生活で支障が出る場合、その点についても触れてもらったほうがいいでしょう。

 

上記のような形で執筆してもらえば、他覚症状の具体的な内容が把握しやすくなり、等級認定を受けやすくなります。

 

それから、検査結果は画像検査の内容を具体的に執筆してもらいます。
もし、画像検査で症状が確認できなくて、スパーリングテストやジャクソンテストを受けた場合には、それらのテスト結果の内容を執筆してもらいましょう。

 

安易に改善している旨の執筆は避けてもらう

「障害内容の増悪・緩解の見通し」の部分には、今後の後遺障害の症状に関する見通しを記載します。
医師に執筆してもらう際には、安易に改善している旨の内容は避けてもらうようにしましょう。

 

改善が見込める旨の内容を記載すると、等級認定を受けられなくなる可能性があるからです。
また、今後の見通しは不明である旨の記載も好ましくないため、このような執筆も避けてもらいたいところです。

 

申請にかかる期間と必要書類

後遺障害申請にかかる期間は、手続き開始後、後遺障害診断書の作成と必要書類の収集する際に要する時間によって異なります。

 

そのため、一概にかかる期間を明言することはできません。
とはいえ、後遺障害申請から審査完了まで2ヶ月以内で終了するケースが大半です。
もし、後遺障害申請の手続き開始から申請まで1ヶ月程度かかるのであれば、3ヶ月以内には審査の結果が出ることになります。

 

また、後遺障害申請の必要書類は、手続き方法によってその内容が変わってきます。
事前認定の場合と被害者請求の場合に分けて、それぞれ解説していきましょう。

 

事前認定の場合は後遺障害診断書のみ

事前認定の方法で手続きをする場合、被害者側で準備する書類は、後遺障害診断書のみになります。
後遺障害申請をする場合、その他にも複数の書類を提出しなければならないのが原則です。

 

しかし、これらの書類は手続きを行なう加害者側の保険会社が収集します。
そのため、被害者側で準備する必要はありません。

 

被害者請求の場合は後遺障害診断書の他に多数の書類の準備が必要

被害者請求の方法で手続きをする場合、後遺障害診断書の他にも多数の書類の準備が必要です。
具体的には、以下の書類を被害者側で準備しなければなりません。

  • ・交通事故証明書
  • ・自賠責保険金(損害賠償)請求書
  • ・事故発生状況報告書
  • ・医師の診断書
  • ・診療報酬明細書
  • ・印鑑証明書
  • ・レントゲン、CT画像など

 

上記の他、治療による休業損害を請求する場合、休業損害証明書の準備も必要です。

 

まとめ

後遺障害申請の方法には、事前認定と被害者請求の二つがあります。
どちらの方法で手続きをするのが好ましいのかは人ぞれぞれです。

 

そのため、二つの手続き方法をしっかり把握した上で、自分に適したほうを選択するといいでしょう。

 

また、後遺障害の等級認定の審査において、提出する書類の内容によって認定されるか否かの結果が異なってきます。

 

特に後遺障害診断書の記載内容は、審査に大きな影響を与えます。
したがって、その点を踏まえた上で申請書類の準備をすることが大切です。
 

 

後遺障害とは?後遺障害等級や申請方法

交通事故による負傷に対して後遺障害認定してもらいたい場合、そのための申請手続きをしなければなりません。

 

後遺障害申請の方法や必要書類は定められているため、手続きをする際には、その点をしっかり把握しておく必要があります。

 

この記事では、後遺障害申請方法の種類、手続きの流れ、申請期間、必要書類などを具体的に解説していきます。

 

後遺障害申請の手続きをどのようにして行なえばいいのか詳しく知りたい人は、是非参考にしてみてください。

 

後遺障害とは?

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後遺障害とは、負傷で障害が残って症状固定の状態になったことです。
症状固定とは、治療してもこれ以上改善が見込めない状態のことをいいます。
後遺障害と認められるためには、交通事故とその負傷の症状固定に関係性がなければなりません。

 

また、症状固定を医学的に証明できる状態にあり、それが後遺障害等級の要件に該当する必要があります。

 

交通事故での負傷で後遺症が残った場合、そのすべてが後遺障害に当たるわけではありません。
上記の要件を満たした後遺症だけが後遺障害に当たるのです。

 

後遺障害等級とは

後遺障害等級とは、後遺障害の症状や程度ごとに区分けしたものをいいます。
後遺障害等級は14段階に分けられていて、症状が最も重いのは1級で14級が最も軽くなっています。

 

交通事故による負傷で後遺症が残ったとき、被害者は後遺障害の申請を行なうのが通常です。
申請後、審査機関より後遺障害に該当すると判断された場合、1級から14級のうち、どれかの等級に認定されることになります。

 

2種類ある申請方法

後遺障害の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類あります。
事前認定と被害者請求では、申請手続きを行なう主体が異なります。
また、双方の手続きにはそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらも一長一短です。

 

 


下記の図表が事前認定と被害者請求の特徴をまとめたものになります。

 

手続き方法 申請を行なう主体 長所 短所
事前認定 加害者側の保険会社 ・被害者自身で手続きをする必要がない ・申請手続き中の経過がわからない
・自分の納得できるような医学的証拠が提出できなくて不利な結果になりやすい
・示談交渉後でなければ、自賠責保険金を受領できない
被害者請求 被害者本人 ・被害者自身で医学的証拠を集められるため、等級認定が受けやすくなる
・被害者自身で手続きを行なうため、その経過が把握できて、手続きの透明性も保たれやすい
・後遺障害等級が認定された旨の通知を受けたときに自賠責保険金を受領できる
・後遺障害診断書と一緒に提出する書類を自分自身で収集しなければならないため、手続きに時間と手間がかかる

 

上記の図表を下に、事前認定および被害者請求の手続きについて、詳しく見ていくことにしましょう。

 

事前認定は加害者側の保険会社主体で行なう手続き方法

事前認定とは、加害者側の保険会社を介して行なう後遺障害申請の手続き方法です。
被害者自身ではなく、加害者側の保険会社が後遺障害申請の手続き主体になる点に特徴があります。

 

事前認定による後遺障害申請の手続き方法には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

 

メリットは被害者自身で手続きしなくてもよい点

事前認定による後遺障害申請で被害者が行なう作業は、後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出することだけです。
その他の手続きは、すべて加害者側の保険会社に任せることができます。
後遺障害申請の手続きをする手間を省けるのが、事前認定のメリットだといえるでしょう。

 

認定審査や自賠責保険金の受領面でデメリットがある

事前認定による後遺障害申請の手続きは、加害者側の保険会社が行ないます。
被害者自身は関与しないため、手続きの過程を知ることができないというデメリットが存在します。

 

また、後遺障害申請の手続きをする際に提出する書類を収集するのも、加害者側の保険会社です。
後遺障害申請で等級認定がなされると、加害者側が負担する慰謝料の金額も多くなります。

 

加害者側に立つ保険会社からすると、後遺障害の等級認定されないほうが慰謝料の金額も少なくなるため、その分都合がよいです。

 

以上のような理由から、加害者側の保険会社が後遺障害申請をする際、被害者側に不利な内容の書類を提出して手続きをしてしまうことも考えられます。
それにより、被害者に不利な審査結果が出る可能性も高くなってしまうのです。

 

それから、示談交渉が終わるまで自賠責保険金を受領できないというデメリットもあります。

 

被害者請求は被害者自身が行なう手続き方法

被害者請求とは、交通事故の被害者自身が手続きを行なう後遺障害申請の方法です。
被害者が自ら手続き主体となる点が事前認定の方法と大きく異なります。
被害者請求による後遺障害申請の手続き方法にも、事前認定と同様にメリットとデメリットがあります。

 

手続きの透明性が保たれて等級認定を受けやすくなるのがメリット

被害者自身が後遺障害申請の手続きに直接関与するため、その経過の透明性が保たれやすいのがメリットです。

事前認定の場合、加害者側の保険会社が手続きを行なうため、被害者が知らない間に、不利な形で手続きが進められてしまうケースも少なくありません。
ですが、被害者自身が手続きを行なう被害者請求の場合、上記のようなリスクは生じないのです。

 

また、事前認定による後遺障害申請の手続きよりも等級認定が受けやすくなる点もあげられます。
後遺障害申請の際に提出する書類は、被害者側で収集することになります。
被害者側に有利となるような書類を収集の上、後遺障害申請を行なえば、等級認定の出る可能性が高くなるからです。

 

それから、事前認定よりも自賠責保険金を早く受領できる点もメリット大きなメリットです。

 

被害者請求の方法で後遺障害申請の手続きを行なった場合、等級認定の通知を受けたときに自賠責保険金を受領できるのです。

 

収集作業や手続きに時間と手間がかかるのがデメリット

被害者請求の場合、被害者自身が必要書類を集めた上で後遺障害申請の手続きをしなければなりません。

 

後遺障害申請の際に提出する書類の種類も多く、医学的証拠となるか否かを踏まえて収集する必要があります。

 

そのため、収集作業や手続きに時間と手間がかかるのが、被害者請求のデメリットになります。
ただ、手続きを弁護士などの専門家に依頼することで、上記のデメリットをある程度解消することも可能です。

 

 

まとめ

今日は、後遺障害の概要や、後遺障害等級や申請方法について解説をしました。

次回は申請手続きの流れなどをみていきたいと思いますので、引き続きご覧ください。

 

本日もお読みいただき、ありがとうございました。