前回は、後遺障害の概要などをご説明しました。
今回の記事では、後遺障害の手続きの進め方などを具体的に解説をしたいと思います。
申請手続きの流れ
後遺障害申請は、決められた手順にしたがって手続きを進めなければなりません。
具体的には、以下の流れで後遺障害申請の手続きを進めていきます。
治療で症状固定の状態になった後手続きを開始する
負傷による後遺症が後遺障害と認められるためには、症状固定の状態になければなりません。
そのため、治療の結果、症状固定の状態になった後、後遺障害申請の手続きを開始することになります。
負傷による後遺障害が症状固定の状態にあるか否かの判断は、医師の診断によって行ないます。
後遺障害申請をする場合、医師の診断にしたがった上で手続きを開始することが大切です。
医師に後遺障害診断書を執筆してもらう
交通事故による負傷が症状固定の状態になった後、医師に後遺障害診断書を執筆してもらわなければなりません。
この後遺障害診断書は、後遺障害申請の手続きをする際に提出しなければならない重要な書類です。
等級認定の可否は、提出する後遺障害診断書の内容が大きく左右するため、後遺障害申請の手続きの中でも重要な局面になります。
医師による後遺障害診断書の執筆に関しては、この後詳しく見ていきます。
後遺障害申請の手続きを行なう
後遺障害診断書を医師に執筆してもらった後、後遺障害申請の手続きを行ないます。
後遺障害申請の手続きは、後遺障害診断書と必要書類を提出することから始まります。
申請手続きの手順は、事前認定の場合と被害者請求の場合とで異なります。
事前認定の方法で後遺障害申請を行なう場合、まず被害者が加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出します。
その後、加害者側の保険会社で必要書類を収集した上で、後遺障害申請の手続きを行なうのです。
一方、被害者請求の場合、被害者自身が後遺障害診断書と必要書類を提出して、後遺障害申請を行ないます。
審査・等級認定の結果通知
被害者または加害者側の保険会社から後遺障害申請がなされた後、自賠責保険会社側で審査を行ないます。
審査は損害保険料率算出機構という機関でなされて、その結果が自賠責保険会社に報告される形で進められるのです。
等級認定の結果の通知過程は、事前認定で手続した場合と被害者請求で手続した場合では、その方法が異なります。
事前認定で手続したときは、加害者側の保険会社に結果の通知がなされます。
そして、加害者側の保険会社が被害者に対してその結果を通知するのです。
これに対して、被害者請求で手続きしたときは、自賠責保険会社から被害者に直接結果の通知がなされます。
症状固定がカギ!医師による後遺障害診断書の執筆
医師による後遺障害診断書の執筆の時期や記載内容は、後遺障害の等級認定を受けるにあたって重要です。
後遺障害申請をする際、後遺障害診断書をいつ執筆してもらえばいいのでしょうか。
また、後遺障害診断書の記載内容についても気になるところです。
そこで、医師による後遺障害診断書の執筆の適切な時期と記載内容について解説していきましょう。
執筆時期は症状固定後
後遺障害診断書には、後遺症の具体的内容を記載しなければなりません。
後遺障害に該当する後遺症の具体的内容を把握できるのは、症状固定になったときです。
そのため、交通事故による負傷が症状固定になった後、医師に後遺障害診断書を執筆してもらうことになります。
後遺障害の具体的内容と今後の見通しの内容が重要
後遺障害申請後の審査では、「他覚症状および検査結果、精神・神経の障害」の部分が重点的に見られます。
また、「障害内容の増悪・緩解の見通し」の部分も同様です。
上記二つの記載事項が等級認定を受けられる内容となるように、医師に後遺障害診断書を執筆してもらいましょう。
他覚症状や検査結果の内容を具体的に執筆してもらうことが大切
「他覚症状および検査結果、精神・神経の障害」の部分には、その内容を具体的に執筆してもらうことが大切です。
たとえば、交通事故でむちうちになり後遺障害が生じたとしましょう。
この場合、むちうちで首や肩の部分に痛みが出たり、重さを感じたりするという形で具体的に執筆してもらうのです。
その際、痛みの強さや出る頻度も正確に執筆してもらいたいところです。
また、むちうちの痛みや重さで仕事や私生活で支障が出る場合、その点についても触れてもらったほうがいいでしょう。
上記のような形で執筆してもらえば、他覚症状の具体的な内容が把握しやすくなり、等級認定を受けやすくなります。
それから、検査結果は画像検査の内容を具体的に執筆してもらいます。
もし、画像検査で症状が確認できなくて、スパーリングテストやジャクソンテストを受けた場合には、それらのテスト結果の内容を執筆してもらいましょう。
安易に改善している旨の執筆は避けてもらう
「障害内容の増悪・緩解の見通し」の部分には、今後の後遺障害の症状に関する見通しを記載します。
医師に執筆してもらう際には、安易に改善している旨の内容は避けてもらうようにしましょう。
改善が見込める旨の内容を記載すると、等級認定を受けられなくなる可能性があるからです。
また、今後の見通しは不明である旨の記載も好ましくないため、このような執筆も避けてもらいたいところです。
申請にかかる期間と必要書類
後遺障害申請にかかる期間は、手続き開始後、後遺障害診断書の作成と必要書類の収集する際に要する時間によって異なります。
そのため、一概にかかる期間を明言することはできません。
とはいえ、後遺障害申請から審査完了まで2ヶ月以内で終了するケースが大半です。
もし、後遺障害申請の手続き開始から申請まで1ヶ月程度かかるのであれば、3ヶ月以内には審査の結果が出ることになります。
また、後遺障害申請の必要書類は、手続き方法によってその内容が変わってきます。
事前認定の場合と被害者請求の場合に分けて、それぞれ解説していきましょう。
事前認定の場合は後遺障害診断書のみ
事前認定の方法で手続きをする場合、被害者側で準備する書類は、後遺障害診断書のみになります。
後遺障害申請をする場合、その他にも複数の書類を提出しなければならないのが原則です。
しかし、これらの書類は手続きを行なう加害者側の保険会社が収集します。
そのため、被害者側で準備する必要はありません。
被害者請求の場合は後遺障害診断書の他に多数の書類の準備が必要
被害者請求の方法で手続きをする場合、後遺障害診断書の他にも多数の書類の準備が必要です。
具体的には、以下の書類を被害者側で準備しなければなりません。
- ・交通事故証明書
- ・自賠責保険金(損害賠償)請求書
- ・事故発生状況報告書
- ・医師の診断書
- ・診療報酬明細書
- ・印鑑証明書
- ・レントゲン、CT画像など
上記の他、治療による休業損害を請求する場合、休業損害証明書の準備も必要です。
まとめ
後遺障害申請の方法には、事前認定と被害者請求の二つがあります。
どちらの方法で手続きをするのが好ましいのかは人ぞれぞれです。
そのため、二つの手続き方法をしっかり把握した上で、自分に適したほうを選択するといいでしょう。
また、後遺障害の等級認定の審査において、提出する書類の内容によって認定されるか否かの結果が異なってきます。
特に後遺障害診断書の記載内容は、審査に大きな影響を与えます。
したがって、その点を踏まえた上で申請書類の準備をすることが大切です。