今日は前回の記事の続きになります。
前回の記事では休業損害の請求手続きに関して個々の事業の営業実態や客観的な資料などにより異なることがわかりました。
それでは、休業損害の手続きの流れや算出のために必要な書類とはいったいどのようなものなのでしょうか?
交通事故の休業損害で必要な書類
交通事故の休業損害で必要な書類はこちらです。
- ・確定申告
- ・診断書
- ・診療報酬明細書
実際よりも少ない金額で確定申告を行なっている場合や、確定申告を行なっていない場合は、帳簿類や通帳など実際の所得を客観的に証明できるものが必要となります。
一般的には、加害者側の任意保険会社が診断書や診療報酬明細書を取り寄せを行います。
そのため、被害者が用意するものは確定申告書のみです。
(注意!)
※これはあくまでも休業損害に関する必要書類ですので、最終的な示談交渉を行う場合は他の書類も必要となります。
交通事故の休業損害請求の流れ
それでは、休業損害請求の流れをみていきましょう。
理解が及ぶまでは、ざっくりと概要を掴んでいき全体像を把握していただくことが大切です。
Step1.加害者側の任意保険会社に必要書類を提出する
↓
Step2.加害者側の任意保険会社が休業損害を算出
↓
Step3.算出された休業損害を提示される(その他の損害賠償項目とともに)
いわゆる示談交渉のスタート
↓
Step4.加害者側の提示してきた金額に納得がいかなければ増額の交渉を行う
※この時点で、弁護士に依頼していなければ早めに弁護士に相談した方がベター
↓
Step5.無事に示談が成立し「合意」に至れば、加害者側の保険会社から「示談書」が送られてくる
↓
Step6.示談書に署名・捺印をして返送する(加害者側の任意保険会社宛て)↓
Step7.示談金が振り込まれる(休業損害金をはじめたの損害賠償金を含む)
※一般的には振り込みまでの期間は2週間ほど
確定申告についてはどうするのか?
それでは、次に「確定申告」にまつわる“気になること”についてみていきたいと思います。
出来るだけ経費を控除せずに済めば、その分「基礎収入日額」はアップしますので、誰もが気になることではないでしょうか?
Q1.テナントや事務所の賃料は控除されるか?
- ・テナントや事務所の賃料
- ・従業員の給料
- ・保険料(火災保険料など)
- ・税金(固定資産税や個人事業税など)
これらは、経費に占める割合が非常に高いことから出来るだけ控除されたくないと思われるでしょう。
これらのような、いわゆる「固定資産」として計上される経費については所得から控除されることはありません。
Q2.確定申告をしていない場合はどうなるの?
確定申告をしていなければ、休業損害はもらえないのでしょうか?
結論からいえば、確定申告をしていない場合でも「休業損害」をもらうことができます。
しかしながら、このようなケースでは収入を証明していかなければならず、各種帳簿や通帳、領収書などを用いて年間の所得を算出しなければなりません。
つまり、確定申告と同じような作業をしていかなければなりませんので大変な労力を要します。
所得の実態を把握できない場合など場合によっては、平均賃金(「賃金センサス」と呼ばれる政府の統計調査)に基づき算出することになります。
Q3.過少申告の場合はどうなるの?
続いて、過少申告のケースはどうでしょうか。
節税対策などで、経費を多く計上しているケースもあるでしょう。
しかし、この場合はあくまでも「申告どおりの所得」を元に算出します。
つまり、「基礎収入日額」が低額となってしまい、もらえる「休業損害金」も低額となります。
※多くの場合は加害者側に受け入れられませんが、帳簿や通帳などで本来の収入を証明することができれば請求が可能となることもあります。
Q4.1度目の確定申告前に交通事故にあった場合はどうなるの?
不運にも、自営業者として1度目の確定申告を行う前に交通事故に遭ってしまった場合は参考となる所得がない状態となります。
このような場合は、平均賃金や前職での収入や役職などを参考にして休業損害金を算出することとなります。
Q5.夫婦で自営業をしていて被害にあったのは一方だけの場合はどうなるの?
ご夫婦で自営業をしている方も多いのではないでしょうか?
夫婦でともに営んでいる以上は、たとえ事故に遭ったのがどちらか一方であったとしても、1人分の所得としては認められません。
このようなケースでは、確定申告金額から夫婦どちらか(被害に遭っていない方)の寄与分が控除されます。
寄与分とは、端的にいえば“貢献した分”です。
- 業種や業務形態
- 関与の程度 など
これらの事情を総合考慮して判断されます。
※加害者側の保険会社は、寄与分を多く主張して休業損害金を過小評価してくることがありますので注意が必要です。
交通事故のけがで廃業をする場合について
これは、決して珍しいことではありません。
もし、ご自分の立場だったらどうお感じになるでしょうか?
自営業者にとっては、“事業を継続するか否か”は生命線が途絶えてしまうほどの重要な問題です。
単に休業期間の収入が減少するだけではなく、廃業前後にはさまざまな費用が発生することは容易に想像ができます。
仕入れたものや、開業のために投資した金額は全て“水の泡”となってしまいます。
これらの損害は、加害者に対して請求できる可能性が高いといえます。
設備投資や在庫商品などの資産価値の何割かが「損害」として認定されることになります。
まとめ
自営業者が交通事故に遭った場合でも「休業損害」がもらえることがわかりました。
また、廃業に追い込まれてしまった場合にも補償されることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
しかしながら、これらはあくまでも休業や廃業に関する問題です。
交通事故の被害に遭うと、場合によっては一生涯「後遺症」に悩まされることや、介護が必要なほどの
怪我を負われることもあります。
そのような場合は、慰謝料額の算出は先にご紹介した「弁護士基準」で算定し最も高額な慰謝料を請求すべきです。
事故後の生活には、綺麗事では済まされない事情がたくさんあります。
その苦しみは本人以外の人には到底理解できるものではありません。
お金で解決できる問題では決してありませんが、現実には慰謝料に換算して償ってもらうほかありません。
交通事故問題は、個々の事故態様により解決手段が異なり非常に難しい問題です。
お一人で悩まずに、まずは「相談料無料」の弁護士事務所へご連絡されてみてはいかがでしょうか。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。